道徳を欠いた経済活動
あるドイツの閣僚が「食料を投機対象にするのは道徳に反する」と言っていた。もちろんドイツ語だから日本語訳だが、こういうことばを聞いたのは実に久しぶりのような気がする。
アメリカも、その猿まねをしていた日本もすっかり道徳を忘れていたのではないか。
経済活動だけではない。教育でも医療でも、競争原理などと道徳に反することをやってきたのではないか。
大学では競争的資金の獲得などと金の亡者に成り下がって、真理の探究という研究者の任務を放棄し、「ウケ狙い」にうつつを抜かすのは研究者の道に反する。
私は今回の金融危機なるものは日本にとって決して悪いことではないと思っている。
道徳。何か懐かしい響きがする。
いつごろから日本人は道徳を忘れたのだろう。高度経済成長、列島改造論、バブル、バブル崩壊、構造不況、小泉政権、格差社会。あるときから熱病に浮かされたように金の破壊力に屈してしまった。
しかし、その中でも日本人は気づいていたと思う。気づいていなかった人は聞こうとしなかったのではない耳に入らなかったのだ。若気の至りというやつだが、やっと耳に入るようになってきた。
しかしそれには多大な犠牲があった。
大きな犠牲をはらって、アメリカ式のやりかたに「おかしい」と日本全体が自覚的になってきた。
バーネット『小公子』(若松賎子訳)の最後は、アメリカからセドリックを追ってイギリスに来たホッブズという乾物屋のことばで締めくくられている。
ホッブズはアメリカに帰らないのかと問われて
どふしてどふして、あつちへ落つくことなんどはまつぴらだ。
わしはこれでもあれの側に居て、一寸後ろ見をして居る積なんだ、若い、働きのあるものには結構な国だらうが、矢つ張り、得失処もあるな。全体、祖先なんといふことさへないし、侯爵といふものはなほのことだ。
古くさい言い方、誤解を生む可能性の高い言い方を敢えてすれば
ご先祖様に顔向けができるか。天皇陛下に申し訳なくないか。


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